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動物霊 私と姉と猫の奇妙な関係

三年前の夏、私と姉は猫に悩まされました。
私と姉は双子姉妹で、自分達でもよく飽きないな、というくらいいつも一緒にいました。
当時はお互い恋人もいて、それぞれ楽しんでいた時期でもありますが、実家暮らしのため家では夜中までくだらない話で笑っていたものです。
そんなある夏の夜、姉の体調に異変が起きました。
私達はよく肩がこったり、腰が痛くなったりという症状に悩まされてたので、今回もそれだろう、と揉み合ったり、市販の薬で抑えたりしました。
私はいつものようにそれで済んだのですが、姉の調子が一向によくなりません。
整骨院などの専門の先生に診てもらっても一向によくなる気配がありませんでした。
顔色も青白く、眠れない、といった日も出てきました。
それから数日後、姉は当時の恋人につれられ知り合いのスナックに行く事になりました。
するとそこのスナックのママさんは霊が見える人と有名な方だったのです。
イタコの修行にも参加された事があるそうで、姉は凄い人と会うわー、と興奮していたのを憶えています。
そして姉達がお店に入った途端、ママさんが姉を見てすぐ駆け寄ったそうなのです。
ママさんは「あんた!何で動けてるの!?大丈夫!?ちょっと座りなさい!」と叫び、姉を座らせると後ろに回って、すぐに肩を叩き出しました。
ばんばんっ、とそれは強い力で、何が何だか、と姉は戸惑ったそうなのですが、ママさんは次にこう言ったそうです。
「動物霊、猫が数百匹もあんたの肩にいるわ」
実家の庭には猫が三匹住み着いていましたが、撫でさせてくれたりと関係は良好でした。
まさか猫が、と私も聞いた時は驚いたのですが、本当の驚きはその後でした。
ママさんは「ちょっと祓いきれないから私にうつすわね」といい、何やらお経のようなものを唱え始めました。
すると姉は背筋を伸ばすのもきついほどの肩こりがあったはずなのに、肩こりを全く感じない、というほどにすっきりしたというのです。
青白い顔色も治り、目もぱっちり開く、と。
姉はそれで凄い、と思ったそうなのですが、猫をうつしたママさんには異常が起きました。
数が多すぎて具合が悪くなってしまったのです。
目に見えるほどがたがたと震え出し、もう立ってられない、と店の奥に引っ込んでしまうほどだったそうです。
もう呑む空気でもないな、と姉達は店を後にしようと思った時、従業員の方が姉を呼び止めました。
そして「全部はうつせなかったからあなたにはまだ猫がいます。コップ一杯の水にひとつまみの塩を入れて飲んでください」とママさんからの伝言があったそうです。
それから帰宅した姉はその話を私にし、お水を用意しました。
コップ一杯の水に塩ひとつまみですからそんなに辛くはなくすぐに飲めるだろうと私は思いました。
ですが姉の様子がおかしくなりました。
水はいつでも飲んでいるミネラルウォーターでした。
なのに姉は「なんか全然飲みたくない……」と言い出したのです。
舌をちろり、と出してまるで確かめるみたいに舐めだすので、私は「普通だって」と試しに飲んでみました。
まったく普通の水で、むしろ塩気など感じませんでした。
いいから一気に飲んじゃいなよ、と私は勧め、姉は半分ほど飲みました。
その時です。
姉は飲み込んですぐにトイレに駆け込んだのです。
何がどうして、と心配になった私もついていきました。
すると姉は吐いていました。
しかし口から出てくるのは透明の水のみで、変だなと私は思いました。
姉は直前まで食事をしてきて、お土産の洋菓子を一緒に食べた後だったのです。
吐くのならそれらも一緒に出てもおかしくないのに、出てくるのは透明な水だけで、それも飲んだ量よりも多いのです。
すぐに落ち着いてくれたのですが、姉にはこの水は塩辛すぎると言いました。
それからまた一口だけチャレンジしましたが、この日はこれが限界のようでした。
それから数日後、私と姉はスナックのママさんと会う事にしました。
肩こりなどの症状は頭痛までにはならず、顔色も数日前よりずっと良かったのですが、相変わらず塩水は吐いていたので詳しく話を聞こうとお店に向かう事にしたのです。
ママさんは私達が双子姉妹というのを知ってらっしゃいました。
おそらく姉の当時の恋人が話したのでしょう。
そして水を吐き出してしまうという事を話しました。
ママさんは「それは残っている猫達が姉の体に留まろうとしているのよ」と言いました。
どうやら塩水はお清めの意味があったようです。
けれど頑張って飲んでいた成果があったのか、数日前より減っている、と言ってくれました。
そしてママさんが左手首にしていた透明のお数珠を姉に渡しました。
左手首に必ずしなさい、とママさんは言いました。
厄除け、つまり猫除けの石なのだそうで、今はパワーストーンのブレスレットなどしている方も多いですから、姉は素直に従いました。
そしてママさんは私にこう言いました。
「あなたは姉と正反対の陽の存在なのね。姉と一緒にいてやりなさい。あなたといた方が霊の力も弱まるから」
双子の私も猫の霊が、と思っていたのにまさか正反対とは、と驚きを隠せませんでした。
確かに私は姉のような症状は表れていません。
その証拠に塩水があげられるでしょう。
それに二卵性の双子、というのももしかしたら、とママさんは言いました。
そして帰り際、ママさんは姉にこう注意しました。
「あなたの体にいる猫は従順よ。例えば、あの人呪いたいから猫達いってー、とか言ったら本当に洒落にならないからね」と。
まさかそんなアニメみたいな事が、と私は笑ってしまいましたが、ママさんの顏は真剣で怖いくらいでした。
それから一週間ほどでしょうか。
姉の顔色も体調も随分よくなってきました。
一番変わったのは塩水です。
海水よりも辛いと言っていた水をごくごく飲めるまでになっていました。
これは猫達が姉の体からいなくなっているという事になります。
後日談になりますが、姉には他にも奇妙な事が起こっていたそうです。
お坊さんに囲まれてお経を唱えられる夢を見ただとか、猫が去っていく夢を見ただとか。
一番は肌の調子がよくなったと言っていました。
それは私の目からも明らかでした。
ママさんにいただいた透明のお数珠もそうです。
一か月が経った頃、透明だったお数珠は真っ白になっていました。
私が、ママさんに持っていってお清めとかしてもらった方がいいんじゃない? と冗談めいて言って自分の腕にはめた時です。
ぴきき、と音がなるほどにお数珠にひびが入ったのです。
それから姉はお数珠を大事にしています。
お数珠を清める小石をママさんに頂き、帰宅してからはそこに置くというのは日課になっていました。
今はもう当時のような症状は現れていませんが、私と姉は離れて暮らしています。
姉は動物霊が憑きやすい体質、私は姉専用の憑きにくくする体質です。
庭に住み着いている猫達との関係は良好です。
ただもう、姉の中の猫には会いたくないと思います。
しかしながら猫好きの姉には悲劇で、奇妙な体験だったと私はこれを忘れられそうにありません。
私と姉と猫の奇妙な関係、でした。