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踏切でさまよう霊を家まで送り届けた話

あれは私が高校3年の時の出来事でした。
土曜日の午後に部活があるので仲良しのユキと学校の近くのおそば屋さんにお昼を食べに行ったんです。そのおそば屋さんは線路際の踏切の傍にありました。電車の音を聞きながらおいしいおそばを食べてお腹は満足。

お店を出ると、道を挟んだ向かいのガソリンスタンドが紅白の幕を張って派手にオープンセールをしているのが見えました。その時です、一緒に歩いていたユキが「お葬式だね、だから白黒の幕なんだね。」って変な事を言うんです。私はびっくりして「ユキ、何を言ってるの?紅白の幕だよ。」と言いましたが、ユキは何かにとりつかれたようにぼんやりと幕を見ていました。
「ユキってばー、大丈夫?」私の声にハッと我に返ったユキ、「え?何が?」「紅白の幕を見てお葬式って変だよ。」「え?私そんな事言ってないよ。」

 そんな出来事があってから1ヶ月ほど経った頃、社会科で地域の歴史のレポートをすることになって、私とユキは学校の最寄り駅から4つ目の駅に近い旧街道沿いにある古い料亭に昔のお話を聞きに行くことになったんです。

江戸時代創業の歴史のあるお店ということで、私とユキは学校の制服をきっちり着込み、失礼のないようにお邪魔しました。その料亭は黒い板塀に囲まれた大きな純和風のお店でした。ちょっと緊張して「ごめんください!」と大声を張り上げると奥から玄関に出てきたのは一目で女将とわかる上品な年配の女性でした。

「いらっしゃい。」言いかけた女将は私たちの姿を見たとたん「あっ。」と驚いて一瞬顔色が変わったのです。でもすぐににこやかな表情になって「こちらへどうぞ。」と私たちを自宅の奥の座敷に招き入れ、お茶やお菓子でもてなしてくれました。私たちは社会科のレポートの参考になるお話もたくさん聞けて「とても助かりました。ありがとうございました。」とお礼を言いました。

女将は「いいえ、そのくらいお易いことですよ。」と笑いながら答えてから、今度は静かに低い声で話し始めたのです。「うちの娘を連れて帰ってくれてありがとうございました。」私とユキは顔を見合わせました。

「うちの娘はあなたたちと同じ制服を着ていたのよ。だから同じ学校なのね。娘は1ヶ月前に学校の近くの踏切で電車にひかれて死んだんです。」「…。」1ヶ月前といえば、あの紅白の幕、踏切で聞いたユキの変な言葉を思い出して声も出ませんでした。ということは、あの時しゃべってたのはユキじゃなくて女将の娘さんだったんだろうか…。

娘さんの霊が踏切の辺りをさまよっていたんだろうか…。娘さんがユキに乗り移っていたとか…。私の頭の中は一気にパニック状態になってクラクラしてきました。ユキは静かに女将の話を聞いていました。「葬儀は終わったけど、もう1度生きてた時の娘の姿が見たいと願っていたらあなたたちが来てくれたのよ。本当にありがとう。」ユキは涙目で黙ってうなずいていました。帰り際に女将は優しくユキの手を撫でて「もしよかったらまた来てちょうだいね。」と名残惜しそうにしていました。

 その帰り道、私もユキもあまり話をしないで黙って歩いていました。なんだか混乱していて何を話したらいいのかわからなかったからです。私は頭の中でこの不思議な出来事の整理をしていました。

踏切事故で死んだ女将の娘さんの霊は家に帰れずに踏切の辺りを彷徨っていて、ちょうど通りかかった自分と同じ制服を着たユキに帰りたいという思いを託したのかもしれません。

そういえば、レポートの資料のためにあの料亭に行きたいって言ったのはユキでした。
いや、娘さんの霊が言わせたのかもしれません。「私たち、いいことしたのかな?」とつぶやくユキに、私は「うん、女将の娘さん、お家に帰れて良かったね。きっといいことしたんだよ。」そう言って自分を納得させたのでした。